好きを仕事にしても幸福度が高まらないワケ『科学的な適職』の書評

昨今、転職市場はこれまでにない盛り上がりを見せており、それに比例して「職選び」に関するありがたきアドバイスは増加傾向にある。その代表格は「好きを仕事にしろ」である。一見正しいように見えるこの主張は数値として評価された際どのように見えるのか。本書では自己正当バイアス蔓延る「職選びアドバイス業界」を科学的な根拠を元にぶった斬っていく。

下記目次です。

  • 本のかんたんな紹介
  • なぜこの本を読んだかor選んだのか
  • ユニークな一節の引用抜粋
  • 自分の考えや本への想い
  • まとめ

本のかんたんな紹介

『科学的な適職』は2019年に鈴木祐さんによって作成された。本書は転職、就職の際によく用いられる判断軸をデータを元に批判する。もちろんダメ出しして終了ではなく客観的な情報を元に私たちの仕事選びを助けてくれる良書である。

ちなみに、作者は下記ポイントを科学的視点から批判する。

  1. 好きを仕事にする
  2. 給与の多さで選ぶ
  3. 業界や職種で選ぶ
  4. 仕事の落差で選ぶ
  5. 性格テストで選ぶ
  6. 直感で選ぶ
  7. 適正にあった仕事を求める

そして、下記ポイントが仕事の幸福度を高めると主張する。

  1. 自由(仕事内容や働き方に裁量権がある)
  2. 達成(前に進んでいる感覚を得られる)
  3. 焦点(モチベーションタイプに合っている)
  4. 明確(なすべきこと、ビジョン、評価軸が明確である)
  5. 多様(作業内容にバリエーションがある)
  6. 仲間(組織内に助けてくれる友人がいる)
  7. 貢献(どれだけ世の中の役に立っているか分かる)

本ブログでは「好きを仕事にする」のみ詳しく後述するが、他の項目も合わせて詳しく知りたい方は是非本書を手に取ってみてほしい。

また、この他にも本書では意思決定の際のバイアスの取り除き方なども紹介している。

なぜこの本を読んだかor選んだのか

就職活動に活かすために購入した。この書籍は就職活動序盤に手に取ったので、ある一定の方向性を早い段階から示してくれた。そのため、職選びの際に無駄な時間を過ごすことなく、ES対策や面接対策、SPI試験対策に多くのリソースを割くことができた。したがって、本書は転職活動だけでなく就職活動中の学生にもおすすめできる。

ユニークな一節の引用抜粋

好きを仕事にすれば万事解決かと言えば、そう簡単にはいきません。多くの職業研究によれば、自分の好きなことを仕事にしようがしまいが最終的な幸福感は変わらないからです。

鈴木祐. 科学的な適職【ビジネス書グランプリ2021 自己啓発部門 受賞!】 (Function). Kindle Edition.

作者は下記研究内容から上記主張を唱えていました。

2015年、ミシガン州立大学が「好きなことを仕事にする者は本当に幸せか?」というテーマで大規模な調査を行いました。

[1]数百を超える職業から聞き取り調査を行い、仕事の考え方が個人の幸福にどう影響するかを調べたのです。研究チームは、被験者の「仕事観」を2パターンに分類しました。

◉適合派:「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプ。「給料が安くても満足できる仕事をしたい」と答える傾向が強い

◉成長派:「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプ。「そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しい」と答える傾向が強い

一見、適合派のほうが幸せになれそうに見えます。ところが、結果は意外なものでした。適合派の幸福度が高いのは最初だけで、1~5年の長いスパンで見た場合、両者の幸福度・年収・キャリアなどのレベルは成長派のほうが高かったからです。

鈴木祐. 科学的な適職【ビジネス書グランプリ2021 自己啓発部門 受賞!】 (Function). Kindle Edition.

研究チームは適合派のような好きな仕事をしたい欲求の強い人間は実際の仕事のギャップを感じやすいと捉え、それが上記のような結果につながったと指摘している。好きな仕事でも対人関係などの諸問題は少なからず発生するが、適合派の場合そういった諸問題に直面するたびに理想と現実のギャップに苦しみ、「本当に今の仕事を好きなのか」という疑問が生まれるとのことだった。

一方、成長派の人間は仕事への思いが少なく、期待度も低いためストレスに強い。トラブルが起きても割り切って対処できることがメリットと主張している。

自分の考えや本への想い

私の本書に対しての感想や気づきなど共有する。

判断の過程も大切だが、その判断を正解にするのも大切

フェミニスト会議に呼ばれて女性の社会進出について意見を聞かれた時、「男とか女とか実力に関係あるんスか??」とガラスの天井を否定してしまい、以後二度とフェミニスト会議に呼ばれる事はなくなったDe⚪︎aの南場⚪︎子さんも同じようなことを言っていたが、重要性を痛感した。

私自身本書に記載されているバイアスを取り除くためのフレームワークを実践してみたが、今いいなと思っている選択肢を優遇するような点数をつけてしまったり、良くないと思っている選択肢を評価しないといったような判断をしてしまっていた。結局、紹介されていたバイアスを取り除くための方法は「視野狭窄に陥らずに多角的に物事を見ましょうね」というものが多く、要素要素で分解した時にはどうしてもバイアスが働いてしまう。

したがって、フレームワークを実践したところで100%バイアスが排除されるわけではないため、意思決定に完璧を求めることは不可能ではと感じた。

しかし、意思決定自体に時間、労力を投下しすぎてしまうと次第に「意思決定それ自体に価値がある」とサンクコスト効果によるバイアスに陥ってしまい、意思決定後の努力を過小評価してしまいそうと感じた。重要なのは意思決定と意思決定後の行動の両方であるにもかかわらずだ。

それならば、意思決定自体を80→100点に上げることを目指すのではなく、意思決定後、仕事に邁進し、「あの選択をしてよかった」と後から振り返られるためにリソースを割く方が賢いと感じた。何でもかんでも完璧を求めると疲れてしまう。100%で走り続けられるほど人間はタフではない。

もちろん、紹介されている意思決定ツールは精度向上に寄与してくれるため、適度な活用を推奨する。

まとめ

今回は鈴木祐さんの書かれた『科学的な適職』の書評を投稿させていただいた。現代の「仕事選び」の常識を科学的視点で評価し、私たちの決断を大いに助けてくれる一書となっている。是非ご自身で手に取って読んでみてほしい。

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